邦人安全対策会議(在フィリピン日本領事館ダバオ事務所 2015年2月5日)
February 4, 2015
シリアにおける邦人拘束事案(ISIL の声明を受けて)
ISIL (イラクとレバントのイスラム国)概要
1.指導者
アブー・アイユーブ・アル=マスリー(死亡)
アブー・ウマル・アル=バグダーディー(死亡)
アブー・バウル・アル=バグダーディー(現指導者)
2.民族/部族:スンナ派アラブ人
3.支配・活動地域
シリアとイラクの一部を実効支配するほか(エジプト・シナイ半島)「リビア」「アルジェリア」「サウジアラビア」「イエメン」「アフガニスタン・パキスタン」の 6 支部を週として認めている。
4.構成員
ISIL の構成員は 1 万数千人と言われている。そのうち、約 6,300 人は ISIL の建国を宣言してからの加入 者だと言われており、建国宣言から急速に勢力を拡大している。新規参加者のうち大半はシリア人だとされる。
事件概要
2015 年 01 月 20 日
1 月 20 日 14:50(日本時間)、シリアで行方不明となっていた邦人とみられる人物 2 名を映した映像が、「イスラム国(IS)」を称するテロ組織、いわゆる ISIL(イラクとレバントのイスラム国)によってツイッター上で発 信されているのを確認。二人はオレンジ色の囚人服を着せられ、真ん中に立つ「IS]戦闘員がナイフを持ち以 下のメッセージを英語で発信し、72 時間以内に 2 億ドルの身代金を要求。
2015 年 01 月 24 日
1 月 24 日 23 時過ぎ(日本時間)、湯川遥菜氏が殺害されたと見られる写真が、インターネット上に配信され た。身代金 2 億ドルの言及はなく、今度は、勾留されているテロリスト「サージダ・アル=リーシャーウィー」の釈放を要求。
2015 年 01 月 27 日
1 月 27 日 22 時 46 分頃(日本時間)、ISIL 系ツイッターに後藤氏のものとみられる音声メッセージ(英語) と後藤氏がヨルダン人パイロットの写真が印刷された紙を手にした画像が公開された。24 時間以内に「サージ ダ」を釈放しなければ、拘束しているヨルダン人パイロット、後藤氏を殺害予告。
2015 年 02 月 01 日
2 月 1 日 午前 04 時 54 分(日本時間)、ユーチューブ上に後藤氏が黒覆面の男(ジハーディー・ジョン) により殺害されたと見られる映像が公開された。
上記を受けて大使館より下記の内容の注意喚起が発令されました。
イスラム過激派組織の ISIL(イラク・レバントのイスラム国)による 日本人と見られる人物の殺害を受けた注意喚起
1.2 月 1 日(日本時間),イスラム過激派組織の ISIL(イラク・レバントのイスラム国)を名乗る人物 が,シリアで行方不明となっていた湯川遥菜氏に引き続き,後藤健二氏と見られる人物を殺害した映像がインターネット上で配信されました。
2.この事件は各国のメディアでも多く取り上げられており,国際的に非常に注目を集めている事件であることや,最近は ISIL 又は ISIL の主張に賛同しているとみられる者によるテロが世界各地で発生していること等 を踏まえれば,日本人,日本企業,及び,日本人学校等の我が国の関係機関や組織がテロを含む様々 な事件に巻き込まれる危険があります。
3.つきましては、上記のような情勢を十分認識し、誘拐、脅迫、テロ等の不測の事態に巻き込まれることの ないよう、各地域の特徴を踏まえた上で、外務省が発出する渡航情報等及び報道等により最新の治安・テロ 情勢等の関連情報の入手に努め、日頃から危機管理意識を持つとともに、状況に応じて適切な安全対策が講じられるよう心掛けてください。
4.特に,シリア,イラクのみならず,退避勧告が出されている国や地域に滞在中の方は,直ちに国外等の安全な地域へ退避するよう強く勧告します。
フィリピンでの影響
ASG(サブ・サヤフ・グループ)→ISIL(イラク・レバントのイスラム国)
昨年 9 月、ドイツ政府に対して、ドイツ人人質の開放条件として、身代金の他、ISIL への空爆支援を止めるように要求。
BIFF(バンサモロ・イスラム自由戦士団)→ISIL(イラク・レバントのイスラム国)
昨年 9 月、インターネットの SNS でを通じて、ISIL と恒常的に連絡をとっており、ISIL と同盟を結んだと一方 的に主張。
誘拐等対策
1.心構え
シリア事件拘束事案において、日本人がターゲットになっていることを再認識して、注意を払う。 フィリピン人の間では、依然として「日本人=金持ち」とのイメージがあり、日頃からの振る舞いに注意する。 最新の治安情報を収集する。
2.人間関係
住居、職場等で良好な人間関係構築 見知らぬものから話しかけられても、むやみに信用しない。 良好な関係にあったとしても、運転手、メイドとは一定の距離を置く。 職場等で暴力的な言動をとらない(恨まれるような言動は慎む。)
3.誘発する環境を作らない
外出する際、常に周囲の状況に気を配る。人通りの少ない道は避ける。 なるべく単独での行動を避ける。 夜間の一人歩きはしない。 周囲に不審者、不審車両がいないか常に確認する。 華美な装飾品、服装は着用しない。 ルーティンの行動は避ける。
4.情報管理
名前、自宅住所、電話番号、家族構成、行動予定の情報は必要な人以外には教えない。 出張等の会社情報も、不用意に従業員等に伝えない、また流布されないように注意する。 知らないものからの電話では、自分から名前を名乗らない。
テロリストとのネゴシエーターを行っているコンサルタント会社による、 「海外でテロリスト等に誘拐された時に行うべき8つのこと」
1.襲撃されたときがゴールデンタイム!
最も逃げられる隙を見つけられる。逃げられるタイミングがあれば即逃げよ。ただし、相手が銃などの武器を所有 していたり、多勢に無勢の場合、速やかにつかまれ。自分の生命が第一。
2.つかまっても犯人と目を合わせるな!
殺される可能性が高まる。
3.最初のうちは絶対に話すな!
相手の気が立っているため、些細なことで殺される可能性がある。無口で相手の言うことに従うこと。そうすれば 人質にすぐに危害を加えることはない。
4.具合が悪くなった場合は薬を要求しろ!
あなたは大切な人質。時間が経てば人間関係も構築できる。具合が悪くなった場合薬を要求すれば要求に 応じてくれる。食事も出される。
5.食事はまずくても食べよ!
どんなにまずい食事でもしっかり食べること。いざ逃げるとなった場合に備え、体力を蓄えよ。
6.体を動かせ!
拘束されている場合でも可能な限り体を動かしておくこと。逃げる際に体が動かないということがないように。
7.ポジティブを維持せよ!
家族の顔を思い出すなど、気持ちをポジティブに持つよう心掛け、絶対に諦めないこと。
8.大の字でうつぶせになれ!
治安維持当局が助けに来た際、何もない場所の真ん中に大の字でうつぶせになること。そうすることで武器を 持っていない人質であることが認識できる。下手に壁際に立ったり、逃げようとすると、撃たれる可能性がある。
補足:フィリピンで家族や知人が誘拐された場合、現地警察に通報すると情報が漏れるおそれがあるため、速やかに大使館に連絡すること。大使館からフィリピン警察の誘拐対策班につなげる。
誘拐事件が発生した場合、フィリピン警察ではなく在フィリピン日本大使館 24 時間ホットライン (フィリピン:02-551-5786)まで連絡してください。